2022年度理事長所信
止まない雨はない~結果を決めて、皆で帳尻~
【はじめに】
2020 年からパンデミックを引き起こしている新型コロナウイルス感染症により、世界中で様々な活動が制限され、社会や経済に大きな影響を与えました。我々、吹田青年会議所は52 年という長い年月の間、吹田でまちづくり運動を展開してきましたが、これほどまで運動に制限を受けたことは記憶にありません。2021 年はワクチン接種も進み、新型コロナウイルス感染症が収束する日を信じて、市民一人ひとりが今できることを精一杯取り組んでいます。私たちと志を同じくする全国の青年会議所の仲間も、青年会議所としてどのような活動を行うことができるのか、また求められているかということを議論・模索した 2 年間でした。
そもそも私たち青年会議所は、「明るい豊かな社会」を目指し、地域に潜在している課題の原因を抜本的に解決するために、持続可能な事業を立案し、その事業を行う意義を市民へと波及させ、市民とともにまちづくり運動へ発展させるべく活動しています。本年は、今一度 55 周年に向けた中長期ビジョンに則り、「明るい豊かな社会」を実現するために、過去を振り返り、今を見つめ、「ヒト・モノ・コト」の本質を見極め、未来を先見し、「修練・奉仕・友情」の三信条を胸に仲間と共に進み続けます。
【青少年の未来=まちの未来】
吹田市内には、当会を含む様々なボランティアグループや NPO などの市民公益活動団体があり、福祉や環境保護・青少年育成・まちづくり・国際協力など様々な分野で、行政とは違った角度から、多彩なアプロ―チで課題の解決に取り組んでいます。行政が中心となる活動においては、公平・平等の観点を持って行うことが基本といえます。そのため全ての課題解決を行政だけで担うと、臨機応変に対応することが難しくなるという側面があります。また、当会は、創立以来、青少年を対象とした事業を行政と連携して開催してまいりました。市内広域を対象としている団体として、本年もまちのニーズに合った青少年育成事業を行います。
私は、これまでの青年会議所活動の中で、非常に印象に残る経験があります。2015 年、J-City~キッズタウン 2015~という事業を開催しました。参加者の一人である小学校 4 年生の女の子が学校になじむことができず、また保護者の転勤で吹田を離れることが決まっている中、何か最後に吹田で良い思い出が欲しいということで当事業に応募してくれました。最初は中々周りの子どもたちと馴染むことができていませんでしたが、積極的にコミュニケーションを取ることが大切だと自発的に考え、そこからチームが一つとなり、当初決めていた売り上げや店舗運営等、自分たちが掲げた目的を達成することができました。「大好きなまちでこんな素敵な思い出を作ることができて、JC のお兄ちゃん、本当にありがとう」と言ってくれたことが強烈な印象として残っています。
この地域で育つ青少年たちは、まちの未来を担う存在です。人の繋がりの大切さや挑戦する心、困難に立ち向かい乗り越える力、達成感、社会人として生き抜く力を身に付け、この地域の未来に夢や希望を持ってもらう必要があります。
私たちは、いわゆるイベントを企画運営する団体ではありません。既存の公益の青少年育成事業に関しては引き続き実施してまいりますが、地域の現状を再認識し時代に適した現実(かたち)を創造する中で、行政と協力し、実施していきたいと考えております。
【世界と繋がる先に見えるもの】
近年、教育やビジネスで、国際的視野の必要性は共通認識になっており、日本社会では不可逆的にグローバル化が進行しています。こうしたグローバル化を支える個人レベルの能力の一つが国際的視野であることは、もはや疑う余地もありません。
インターネットや SNS がコミュニケーションツールとして世の中に浸透して以来、国境や人種の違いを意識することなく、世界中の人々とやり取りができるようになりました。東京 2020 オリンピックのようにスポーツを通した国際交流、日本の教育機関への国際バカロレア(国際的な教育プログラム)導入など、世の中のグローバル化は誰にとっても他人ごとではなくなってきています。このグローバル化の波に乗るためには、若いころから各自が国際的視野を身に付ける術を学んでおく必要があります。
当会は、1988 年に香港浩洋青年商會と姉妹提携を結んでから、30 年以上もの間交流を深めてきました。3 年に 1 回、日本と香港の同世代の青少年を対象とした交流事業である JointProject を行い、一つの課題に対する両国の環境の違い、文化の違い、価値観の違いを議論してきました。昨年開催した Joint Project は、新型コロナウイルス感染症の影響で Web での実施となりましたが、参加した高校生が非対面を感じさせない白熱した議論で、両国のジェンダー・バイアスについて語り合いました。本年は、引き続き Joint Project2021 to 2022と題し、様々なプログラムを企画し、国際的視野を持った人材を育てる国際交流事業を行います。
【支え信じ合う先に見えるもの】
青年会議所は、品格ある青年であれば個人の意志によって自由に入会できますが、20 歳から 40 歳までという年齢制限を設けています。これは青年会議所が、青年の真摯な情熱を結集し社会貢献することを目的に組織された青年のための団体であるからです。
そして、集まった青年たちがより効果的に青年会議所運動を行うためには、会員相互が強い絆で結ばれ、また組織として魅力溢れる団体へと進化し続けなければなりません。全ての会員に青年会議所の意義や魅力を広く伝播し、青年会議所運動への積極的な参加を促すことで、意識を共有し組織力をより強固なものにしていくことができます。また、効果的で継続的な人材育成を目的とする団体として、多くの機会を創出し提供することで、青年会議所や地域を担う人財を育成することもできます。
本年は、近畿地区大会が同じ北地域の仲間である高槻の地で、またアジア・太平洋地域の青年会議所会員が一堂に会する国際会議 ASPAC が同じ大阪府下の仲間である堺・高石の地で開催されます。多数の青年会議所会員が参集する大会において、参加者は自分と同じ理念・目的を有している会員が多数存在しているという確かな認識を持つことができます。それは、各自の地域運動への大きな自信に繋がり、数多くの会員との意識の共有・体験の共有・同志としての連帯感の形成にも大きく役立ちます。また、共通の理念とビジョンを開催地の市民と連帯することになりますので、自分たちのまちのために汗を流そうと考える市民を増やし、青年会議所運動の輪を広げることができるチャンスが多くあります。
【仲間が増えた先に見えるもの】
私たちの同士を増やす会員拡大活動は、まちづくり運動を実りあるものにするために必要不可欠です。会員拡大活動を行わなければ、私たちのようにまちの未来を考えて行動する人が減少し、組織が弱体化することで運動・発信力が低下し、持続可能な社会に向けて運動を展開していくことが難しくなります。会員一人ひとりが会員拡大の目的を理解し、組織全体で意識を高めることが、持続的な会員拡大へと繋がります。私たちがまちづくり運動の最前線に立ち、地域への想いを共にし、行動する仲間を一人でも多く迎え入れ続けることが必要です。
また、会員拡大活動を行うにあたり、認知のための広報、そしてファンづくりのための広報も必要になります。広報なくして拡大の仕組みづくりは叶いません。SNS の発達・浸透により誰もが情報の発信者になることが可能になりました。情報は世の中に無数に溢れ、これまでは受動的であった情報収集は、自ら情報を取得しにいく能動的なものに変化しています。最近では、「まだ知らないけれど興味がある(はず)」という特定の市民に向けコンテンツを表示させる広報もありますが、昔ながらの手法である折り込み広告など、柔軟に市民のニーズに合った様々な形の広報を受動的能動的問わず、改めて検討する必要があります。
理想の会員拡大活動は、私たちの活動を知ってもらい、理解・共感を得て、共に活動したいといった想いが生まれ、入会へと続くことです。今、当会の会員数は減少傾向にあります。会員拡大活動を成功させることは、当会が維持・発展し、地域に必要とされる組織として存在し続けることになります。その結果、私たちの活動や運動が永続的に続き、明るい豊かなまちの創造に繋がると確信しています。
【学び続ける先に見えるもの】
様々な価値観を持った会員同士が切磋琢磨し合い、多くの啓発を受ける機会に恵まれている青年会議所は「人生最後の学舎」とも呼ばれています。
人は「おもしろい」と感じられるものに心を動かされます。そして、「なぜするのか」、「何のためにするのか」、「何を叶えたいのか」と課題に対して「なぜ」を一つひとつ明確にしていくことで、物事の本質にたどり着くことができます。課題を掘り下げる際は、偏った考えで行うのではなく、広い視野を持って行うことが大切です。ジャンルにとらわれず、様々な知識を学び続け吸収していけば、自然と自らの視野が広がっていくことが実感できるようになります。
こんな時代だからこそ、広い視野で物事を捉えられ、物事を的確に判断することのできるリーダーが必要です。我々会員一人ひとりが、今こそ成長し、リーダーとして必要なものを共に考え、共に学び、地域に根差す青年経済人としてリーダーシップを発揮し、まちを牽引していかなければなりません。
また、自分たちで考え成長する以外にも、青年会議所には様々なプログラムが用意されています。本年度は、青年会議所のネットワークを利活用した継続的な研修・教育プログラムの受講を促し、各々が認識しているまちづくり運動・青年会議所運動の基礎を磨き、価値観を共有・共感することで、当会のボトムアップを図ります。
【むすびに】
私は 2014 年に吹田青年会議所に入会しました。青年会議所の存在意義をよく知らない当初のうちは「ティッシュを配る程度のボランティアと、経営者が集まって懇親会をする団体」くらいにしか思っておりませんでした。なんとなく入会し、仕事に繋がればいい、知り合いが増えればいいと、まちのことを考えることの意味さえ分からず、ただ自分のことばかり考えていました。青年会議所活動を続ける中で、時には仲間と主張がぶつかりあい、落ち込んだこともありました。しかし、多くの先輩方が未熟だった私をこうあるべきだという方向に力強く導いてくださり、自分自身が成長していくのを感じました。
また、入会していなければ決して関わることがなかったような人たちと、まちや子どもたちのことについて議論を交わし、一つのものを作り上げていくことに楽しさややりがいを感じるようにもなりました。青年会議所に対する想いは人それぞれ違いますが、本気でまちのことを想い、最優先に動く。そんな先輩方の姿をみて、必死についていくばかりでしたが、本年度理事長の職を拝命するまで成長することができました。
『結果を決めて、皆で帳尻』
この言葉は、私が非常に大切にしている言葉です。「ゴールを決めて、頑張る」という意味もありますが、とりわけ「帳尻」という言葉が非常に大切であると感じます。目標を達成することができれば最高ですが、もし達成できなかったとしても、そこはなんとなくごまかしたっていい。なんとなくその目標に達したように見せかけたって大丈夫。だから達成しなくても落ち込まなくていいし、終わった後で追い込まなくていい。そのゴール付近にさえたどり着ければ、大切な仲間があと一歩ゴールに近づけてくれるという意味もあります。
私自身のこれまでの青年会議所活動の中で、何度もこの言葉に救われたことがあります。この言葉通り、きっちりとゴールを決めて努力すれば、最後は仲間が助けてくれ、一緒にゴールすることができる青年会議所。こんな素晴らしい団体の一員として、これからも私は仲間とともに走り続けます。
基本方針
◆コロナ禍の青年会議所活動の確立
◆SDGsの推進・達成への貢献
◆行政と連携し、まちの未来をつくる青少年育成事業
◆国際的な視野を育む Joint Project
◆絆を深め、組織力をより強固にする会員交流
◆他青年会議所との連携強化
◆より理解・共感を得る会員拡大活動
◆効果的な広報活動の模索と実行
◆会員が学び続けることのできる定例会
◆青年会議所のネットワークを利活用した研修の受講
◆確実な組織運営と理事会運営
◆運営を支える基盤となる財政規則審議会