森第54代理事長(以下、森)
青年会議所に入会して1年目に後藤市長から、青年会議所で活動していく上でのモチベーションは何か?という質問を受けたことがありまして、その時は上手く言葉にできなかったんです。そこから今まで考えていて、今日はせっかくお話できるということで答えを考えてきました。それは、やっぱり“おもろい”なということしか残らなかったんです。仕事をしていても“おもろい”し、青年会議所の活動をしていても“おもろい”し、やっぱり“おもろい”ということが重要だなと考えています。
後藤圭二市長(以下、市長)
それは大正解だと思います。全く一致します。おもしろいより“おもろい”なんですよ。このテーブルで職員から報告や協議の説明を受けるんです。けど、それおもろないと言います。それをだんだん職員はわかってきて、これでいったら多分市長におもろないって言われるなと。オチとひねりなんですよ。それと、二次的三次的波及効果、ここがおもろいんですよ。これをやることで実は狙いはここなんですと、ツボをおさえるようになってきました。だいぶその文化になってきました。真面目が評価される社会の中で、“おもろい”のレベルが高いことも大切だと思います。
森
そうですよね。何かを処理するということも重要な仕事ですけど、最近思うのは、それが良いかどうかは別として、作業自体はAIや技術に代替されていくと思っています。そこで、自分たちがする作業の部分が無くなってきたら、“おもろい”っていう所にいかないと、人間の価値が少なくなるんじゃないかなと考えています。
市長
仰る通りです。ワクワクとかドキドキって、多分AIはしませんよね。ちゃんと冷静にデータ分析をして答えを出すのがAI、ワクワクドキドキするようになればAIではなくなります。
森
作業的なものが代替されていく中で、青年会議所でも継続して同じようなこともするし、また違うような新しいことをしようぜという雰囲気が、僕が入会した7年前からでも少しずつ変わってきているような気がしています。今年であれば、吹田市在住の子どもを連れて富士山に登山をしたり、新しいチャレンジをしています。
市長
それってね、なんでワクワクドキドキするかというと、リスクがあるからですよ。六甲山に登ろうと言ってもあまり“おもろい”と思わないでしょ。その“おもろい”ギリギリの線ってあるでしょ。そこを成功させる能力が必要。それ以前に減点法の社会ではリスクを冒したくないので、“おもろい”ゾーンに入らないんです。普段の行動や、就職や旅行にしても安全側にどうしてもなる。“おもろい”と言ってる人は変人なんですよ。僕も直接言われたことがある。“おもろい”、それはおもんない、もうちょっとおもろならんかと言ったら、ある職員に真正面から「後藤さんは仕事で“おもろい”とか言いますけど、私は今まで“おもろい”と思ったことがないです。これからも“おもろい”とかどうでも良いです。」と言われました。それで、なるほどなぁ、そうかそうかと、そういう人もいるなと思ったんです。ただね、その比率がわからなかったんです。こっちがマイノリティではないかと、どうやら私が変わっているんじゃないかと。
森
変わってますよね。(笑)
市長
そうそう。8割方は“おもろい”でリスクを冒さずに仕事をしている。それで、チャレンジをして、トライ&エラーで失敗しても、次頑張りますという層が1割2割ぐらいです。この割合が組織として正しいんです。8割がいないと2割が成り立たないんです。だから、富士登山の時もよし行こうぜ!というタイプと、裏できっちりと計画を立てて保護者の方にも説明してという人もいる。そういう仕事に支えられて“おもろい”仕事がある。ともすると“おもろい”仕事をしているクリエイティブな人間が「もっとチャレンジしろ」とか言うんです。ただ、全員がチャレンジしたら破綻するんです。
森
確かにそうですね。青年会議所はまちにおける社会実験をする側面があるので、担当者が思う“おもろい”ことをやって、それを裏で支える人もいて事業が回っています。ただ、仕事と少し違うのは毎年役職や役割が変わるので、今年は“おもろい”ことをして、来年は後ろで支える役割になる。そうやって2割も8割も経験しながら、そこで何か失敗をしても、次に活かせる結果が積み上がっていくので、両面で経験を積むことができています。ただ、何か新しいことに挑戦するためには、今まで継続していたものばかりを続けていくばかりでも難しいですよね。
市長
そうですね。吹田まつりや、Inforestすいたでもそうですが、例えば千里南公園のバードツリーで言うと、コーヒーに高い金額を支払って飲む人はいない、誰も来ないという意見がありました。
森
大人気ですよね。地域の住民の方にもメリットがあるし、お店の人もビジネス的に成功しているし。
市長
バードツリーを運営しているオペレーションファクトリーにとって大きな仕事だったと思います。ただ、発注が役所でしょ。アーティスト風の建築士が出してきた設計図がログハウス風だったんです。向こうは相手が役所やからあんまり尖ったらあかんな、公園やし。と思ったんでしょうね。それで突き返したんです。アーティストとしての本領を出してくれと。じゃあやりたいようにやらせてもらいますということで、今のデザインになったんですよ。そこら辺のせめぎあいがここであったんです。Inforestすいたについては、モノを売る場所であるEXPOCITYの中に、何かよくわからない空間があって、あっと驚くようなアートの空間を作って欲しいと考えていました。情報発信基地というものではなく、あそこに入ったら吹田かどうかわからんというのがウリでしょ。今どこにおるんやろと感じてもらいたい。吹田を発信しようという気持ちがそこにあったらアートのブレーキになります。
森
吹田青年会議所も芸術には関わらず“おもろい”人は多いんですよ。直接アートに関わっているに関わらず、アート的な思考を持っている人もいます。堅い仕事をしている人も青年会議所の活動の中で“おもろい”部分を開花してもらったら良いと考えています。30年後違う仕事をしているかもしれませんし。
市長
何か新しいチャレンジをする時に専門家だけを集めると難しいという事例があります。以前、高速道路の吹田インターチェンジから流入する車に対し、環境対策費を自分たちで持ってもらうために課税しようとしたことがあります。ETCであれば1台1円でも良い。それで30億円ぐらいにはなる計算で、その仕組みを作ろうという事で庁内の優秀な法学部出身者を集めたんです。ただそれが失敗だった。こういう問題があります、他事例ではこうですとは言うけど、自分たちから新しいチャレンジをする時のアイディアが出てこない。つまり、専門家は一人で良かった。残りは“おもろい”人を集めないとクリエイティブな仕事はできない。「これは法のここに抵触しますとか、こんな前例があります。」ということに対して、じゃあ「法を変えたら?」と言うと、キョトンとする。条例も変えられるし、法に関しても変える方法はいくらでもある。“おもろい”ことって実はそっちの方で、その枠内で“おもろい”こともあるけど、これまでの枠を超えるおもしろさっていうのもある。これだけ人が変わってDXやと言っているのにいつまでそれやっているのっていう事例はたくさんある。変える必要のある所を変えていく。変えなくても良い所もあるけれど、たとえ伝統的な所であったとしても、伝統も動かなくなったら終わりです。
森
僕が思うに、伝統って変わり続けるからこそ伝統やと思っているんです。
市長
そうそう。でも、伝統で生きている人は変えてはいけないと思っています。
森
でもそれって衰退しますよね。
市長
確かにそれは重要ではあるけれど、新たに出てくる人を潰しにいってはいけないですよね。音楽でもそう。葉加瀬太郎さんはクラシック界の枠を超えている。それがかえって市民感覚では親しみやすくて盛り上がる。音楽ってそもそもそういう人の心に働きかけるものだと思います。
森
本当にそう思います。伝統も始まった時は革新やなっていつも思うんです。その本質的な意味を掘り下げて、そこは残すけどやり方を変えていくっていうのが本物だと思ういます。
市長
動いているものですよね。
森
そうです。
市長
クラシック音楽で言うと、今残っているクラシック音楽は山ほどあった中のほんの一部の本物だけが継承されています。クラシック音楽も、以前いらっしゃったクラシックの大家が自らおっしゃっていました。当時流行の最先端で流行りきって中身のある本物だけが残っていますと。
森
次の吹田青年会議所のスローガンはRethink~当たり前を問い直す~としていて、行なっていることを考え無しに続けていくのではなくて、一回考え直して、本当に必要なのかとか、変えた方が良いんじゃないかと検討していく。必要であれば、本当に続ける意義を自分たちも感じることができますし、そのような点を一つずつ棚卸ししていきたいと考えています。そうすることで良い伝統が残っていけばいいなと思っています。
市長
コロナがあったからこそ見直されて、新しいことができたと。ただで倒れて起き上がるのは悔しいですね。あれがあったからこそ、今があるというものが絶対欲しいですね。
森
本当にそう思います。せっかくに変えたいですよね。チャンスじゃないですけど。
市長
社会全体の価値観が変わってきて、自分の時間を大事にしたい人が増えてきたと思います。仕事終わりにちょっと飲みに行こうかという文化は少なくなり、飲み屋よりもカフェの時代になってきています。お昼前にはバードツリーにも人が並んでいると思います。そういう場所が求められていると思います。次の世代、その次の世代のための20年後の公園のあり方を考えていきたい。吹田青年会議所さんも新たな伝統を皆さんが作っていくということで楽しみにしています。
森
そうですね。作り続けられるような青年会議所であろうと考えているので、引き続きよろしくお願い致します。本日はありがとうございました。