2023年度理事長所信
Rethink ~当たり前を問い直す~
【はじめに】
1970 年の創立以来、吹田青年会議所は時勢に合わせた問題を見出し、真っ先に問題の解決に取り組むだけではなく、その経過から新しい価値を創造し続けることで、まちの未来を先見する人や企業、団体に影響を与えてきました。そして、それらの関係性を有機的で前向きなものへと繋げていくことで、まちづくり運動へと発展させてきました。
私は、吹田青年会議所に入会してから、我々が目指している「明るい豊かな社会」とは何なのかについて考えてきました。まちに関わる一人ひとりが社会課題を自らの問題意識によって見出し、対話を通じて効果的で創造的な手法によって解決していく。このようにまちの未来について関心を持ち、実際の行動に移す人が多くなればなるほど、常に新しい価値が生まれ、「明るい豊かな社会」へと歩みを進めていくのだと信じています。
まちには様々な人が住んでいます。情報化社会の後押しを受けて、その多様性の広がりは、日々広がっています。それゆえに、問題意識も人によって異なり、その方向性もバラバラになってしまう可能性があります。吹田市にはそれらの多様性をそのままの形で受け止めるだけの土台はあると考えています。そこで、その無数にある方向性の中で、私たち自身が公益的かつ民間的な手法によって問題を解決していく先駆者となり、その方向性を示す必要があります。
【55 周年に向けて】
青年会議所は先駆者を育成する機関でもあり、会員に対して様々な機会を提供しています。この学びを糧に社会に対してポジティブな変革をもたらすことで、新しい価値を創造しようとする人材を世の中に輩出し続けています。
当会は来年で創立 55 周年を迎えます。本年度においては、まず 55 周年に向けた中⾧期ビジョンに沿って実施してきた活動や、まちづくり運動について検証します。そして、創立から今に至るまで積み重ねてきた歴史を引継ぎ、今を見つめ、未来を見据えて 60 周年に向けた中⾧期ビジョンを策定します。中⾧期ビジョンの策定には、吹田の歴史や現状を調査し、地域のニーズを分析することはもちろん、当会の組織運営におけるシステムの見直しも含めた検証の上、より大きな効果を生み出すための当会のあり方を模索しなければなりません。その議論を進めていく過程こそが、当会の活動の意義を再認識することにも繋がっていきます。
【未来を支える青少年の育成】
まちの未来を論ずる時に、未来を支える人材像は欠かせません。まちとは人の集合体であり、目の前に広がるまちの風景は人が幸せになるために生きた結果であり、プロセスでもあるからです。
これからのまちや人々の未来を支える人材に求められる資質には、自らの好奇心によって学びを深め、当たり前を問い直すことによって、社会に潜む問題を自ら設定し、新しい価値観やまちの在り方を提示し、周囲に共有しながら社会課題の解決に取り組む力が求められます。
そして、子ども自身が自分と向き合い、他者や社会と向き合いながら、新たな創造性や独立した価値観を獲得することができる機会の提供が必要です。ここに当会がこだわって取り組むべきものがあります。
また、子どもへ機会の提供をするだけではなく、事業実施のプロセスにおいて地域の団体や大人にも参画してもらい、関わり合う全ての参加者が学び合うことができる地域共育を推進していきます。更には、事業を進める中で、地域の団体が協力し合うことができるための枠組みを整えることも模索していきます。
【新しい価値観が提案できるまちづくり運動】
多様性を認め合う社会になり、生活拠点を中心とした地域コミュニティが衰退していく一方で、時間を短縮する流通、交通網の発達、更には空間からも解き放たれたバーチャルな分野が私たちの生活に多くの影響をもたらしています。それは単純にメリットやデメリットで語ることができず、今までの当たり前を問い直しながら、今の時代にあったコミュニティという存在を新たに見直す必要があります。そして、まちの制度や暮らし、自然環境や教育やビジネスに至るまで、最適化に関する議論を始めていかなければなりません。
その議論の結果は一つである必要もなく、各々によって異なっていてもそれらをそのままの形として、様々な価値観を持つ人同士で議論を交わすことが重要です。そこから何らかの仮説や課題を見出し、一人ひとりが実際に行動していくようになると、まちに新しい価値が生まれ続け、まちの持続可能性が高まっていきます。
本年度においては、地域の団体や企業、市民の参画を促しながらも、事業を実施するプロセスにおいて、今の当たり前を問い直すことができる議論を深め、一つの提案としてまとめられる事業を進めて参ります。
【未来に向けて学びを深める】
未来を考えるにあたって重要なことは、人材育成にしても、まちの未来を考えるにしても、まずは当会の会員自身がまちの一員であり、当事者であるという自覚を持つことです。自らの価値観でもって社会課題を見出して解決していく基点となるのはまずは自分だという気概を持ち、当たり前を問い直すことができるだけの知識や経験を得ると共に、問題が何故発生をしたのかという根源的な原因を追究するための論理的思考や、問い続ける姿勢がとても重要です。
社会課題には環境や教育、貧困、差別などの問題だけではなく、SNS 等を通じた比較的新しい犯罪行為や危険性が生まれる可能性があり、今までの文脈だけでは語ることができない問題もあり、常に新しい事象に対して興味、関心を持ち、学びを深めていかなければなりません。
【未来に向けた持続可能なまちづくりコミュニティ】
青年会議所は地域で活動するまちづくりコミュニティであり、全ての会員が事業活動の傍ら、自ら会費を支払い、時間を費やして昼夜を問わず公益的な目的を持って活動しています。また、青年会議所は日本中・世界中に存在しており、私たちには世界中の会員と共に活動し、交流をする機会が与えられています。
青年会議所の多くは 20 歳~40 歳の年齢制限があります。だからこそ所属する会員は自己を変えられる柔軟性と果敢に挑戦する若さを持っています。この若さと、さきほどの成⾧の機会が与えられるシステムとの掛け算にこそ、青年会議所の特徴と強みがあります。この社会的な成⾧の枠組みに多くの青年が集い、社会に対する問題と真剣に向き合うことによって、まちの未来がポジティブに変化していくことは間違いないと確信しています。
しかしながら、多くの青年会議所で会員数の減少が問題となっており、当会でも会員拡大は喫緊の課題となっています。仲間が増えることによって、当会が社会に与えるインパクトが大きくなることも会員拡大における目的の一つです。
ただ、青年会議所という未来を支える成⾧の枠組みに参加し、より多くの知恵を育み、社会において活躍する人材を少しでも多く輩出していくことがより重要な目的だと私は考えています。会員拡大そのものが重要な公益的な目的を持った事業だと認識し、会員一丸となって拡大に力を注いで参ります。
【魅力的かつ多様な人材が集まる組織というブランディング】
社会に向けて仮説を立て、ポジティブな変革を生むための実験を重ねていくためには多くの仲間が必要であり、そのような社会的なインパクトを与えられるような運動の基点には自ずと人材も集まります。
そのためにも会員自身が当会の活動や存在に意義を感じ、それを言語化し、日々の生活や社会活動に活かすことによって、より魅力的な人として周囲から感じられるようになることがとても重要です。なぜならば、組織は人の集合体であるからです。
当会そのものの広報活動を通じて、当会の活動の意義をまちに広く認知してもらうことはもちろん、会員一人ひとりにスポットをあてることによって、会員一人ひとりの成⾧のストーリーや、個性に対する共感を集めていきます。それは、ただの体験談や経験談に留まらない具体的な広報活動を再検討することであり、広報活動という面においても新しい価値を提示していきます。
【むすびに】
私は吹田青年会議所に入会して活動してきた 9 年間考えてきたことがあります。「明るく豊かな社会」とは何か、そしてその社会を目指す人材を育成しようとする青年会議所の社会的意義とは何なのかを。
入会当初は理想と現実の違いを自分なりに消化することができない場面に幾度となく出くわし、いくつかの疑問を抱えながら活動していました。しかし、実際に活動を進めていく中で、志を持つ青年経済人を多く輩出する学び舎としての機能や、その機能の効果を高めるための様々な仕組みを理解できるようになりました。
公益的で民間的な手法とは青年会議所における活動に限られたものではなく、本業における事業活動そのものも社会との繋がりにおいては切っても切り離せないものです。活動の目的が常に誰かのためのものであるならば、それは青年会議所活動だけではなく、事業活動の先に「明るく豊かな社会」があることを意味しています。少なくとも青年会議所活動と真剣に向き合った会員にはその意味に気付くための種が存在しているはずです。
青年会議所活動はボランティア活動ではありません。青年会議所活動における手法だけに囚われず、社会課題の原因を追究し、目的を設定することによって問題を根本的に解決しようと試みるプロセスは本質を見出す力を与えてくれます。一つひとつの疑問に対して、本当にそうなのか?何故そうなのか?と問いかけ続けることによって、当たり前を問い直す力を身に着け、一人の青年経済人として社会の当たり前と向き合う資質が身に付きます。
今こそ、目の前にある数々の当たり前や慣習を問い直し、未来に向けて新しい価値を提案していく運動を展開して参ります。
基本方針
◆新しい価値を提案するまちづくり運動
◆未来を支える人材を育成する青少年育成事業
◆未来を見据えた学びを深める定例会
◆まちの未来を考える公開討論会
◆持続可能で効果的な組織運営
◆人の魅力で人材が集まる会員拡大
◆ブランディングのあり方を見直す広報活動
◆当会の運動の基礎を担う財政規則審議会