2024年度理事長所信
共に進もう ~1歩前へ~
【はじめに】
私が考える理想のまちは「積極的な挑戦が後押しされるまち 」です。令和4年全国学力・学習状況調査では「将来の夢や希望を持っていますか 」という問いに対し「はい」と回答した中学生は37%であり、その数字は年々減少傾向にあります。また令和3年に実施した同調査では「難しいことでも、失敗を恐れないで挑戦していますか」という問いに「はい」と回答した小学生は24%、中学生は20%でした。私は、近年の吹田青年会議所の活動においても、失敗を恐れ、本当にやりたいことができていない のではないかと疑問に思うことが多くあり、そういった大人たちの姿勢が子どもたちの消極的な姿勢にも影響しているのではないかと考えています。
我々も含めた成人期(20~40歳)に失敗を恐れ、何もしなければ経験を積むことができません。成人期に様々なことに積極的に挑戦し、何度も失敗から学び、それを糧として再度挑戦する。この経験こそが豊かな人間性の礎になると私は考えています。自身が豊かな人間になれば後世に対し、挑戦することの大切さを伝えることのできる、青年の挑戦を後押しできる人間となり、支え合い共に挑戦できる。そういう人々で溢れるまちが私の理想のまちです。
私自身、この7年間の青年会議所活動で先輩・仲間に支えられ、様々な挑戦をし、多くの失敗を通して、学ばせて頂きました。初めて書いた議案は余りのできの悪さに「大枝君、一から書き直して!」と言われ一から書き直しました。わんぱく相撲では、規模を大きくしたいと予算を大幅に超える議案を作成し協賛金を取り入れる設営にしたいと訴え、当時の正副役員を大いに困らせました。公開討論会では、司会として登壇し現職の吹田市長の名前を読み間違えました。 その都度、先輩方は厳しくも愛のある叱咤激励を下さり、そのおかげで成長させて頂き、今の私があります。
一人ひとりが思い描く未来に対し挑戦し、周りの人々が背中を押し、共に一歩を踏み出せる。そんなまちになってほしいと願い本年度のスローガンを「共に進もう~1歩前へ~」としました。
【共に歩んだ歴史】
吹田青年会議所 には、様々な挑戦と失敗 を繰り返し吹田のまちで54年間に渡り積み上げてきた歴史があります。公益社団法人日本青年会議所の活動目的 は「明るい豊かな社会を築き上げる」ことです。その目的のために当会 は吹田の地で、行政・地元企業・教育機関など関係諸団体の皆さま と共に、挑戦と失敗を繰り返しながら活動を続けて参りました。
この54年の間、 阪神淡路大震災、東日本大震災、大阪府北部地震などの災害、アメリカ同時多発テロやロシアによるウクライナ侵攻、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックなど、誰も予想できない困難が幾度となく発生しました。その都度、青年会議所は考えうる最善を求め皆さまと共に活動を続けて参りました。
2022年の世界会議 にて青年会議所はMission(使命)を「青年会議所は、青年が社会により良い変化をもたらすためにリーダーシップの開発と成長の機会を提供する」、Vision(目標)を「青年会議所が、若きリーダーの国際的ネットワークを先導する組織となる」に改訂しました。その時々の地域の課題を常に調査し、より良いまちづくりのために最善を求め、地域と連携し活動を運動に発展させていく。我々には、日ごろからそのことを念頭にリーダーシップを学び、能力を向上させる使命があります 。日々の活動で培った能力を吹田のまちづくり・ひとづくりのために皆さまと連携しながら挑戦し続けることで、これまで当会の活動に共感し、ご協力頂いた皆さまへ感謝の意を示して参ります。
【一歩踏み出す地域連携】
これまで、吹田青年会議所は皆さまと共に「吹田まつり」「すいたまちづくり・ひとづくりサミット」「キッズタウン」「ジョイントプロジェクト」 など、まちづくり・ひとづくりの分野で様々な事業に挑戦 してきました。これらは当会だけで実現することはできず、共感し 、共に 歩んできた皆さまのおかげで実現することができています。
吹田市内には1970年に日本初の万国博覧会 が開催された万博記念公園、北大阪健康医療都市「健都」を中心とした医療環境、プロサッカーチームであるガンバ大阪、5つの総合大学などがあります。全国的に見てもここまで充実した地域は他にはありません。
また吹田市は全国的に見ても珍しい人口が増加している都市 であり、この10年間で総人口は約7%増加しています。しかし、20~40歳までの人口は約3%減少しており、我々の会員数も年々減少傾向にあります。それでも我々はこれからも吹田のまちづくりの一役を担っていく使命 があります。その使命を全うするためには我々だけでは困難です。多くの団体が会員減少に課題を抱え1団体としての活動が困難になりつつある時代だからこそ、同じ目的を持つ団体 同士が力を合わせ、 今まで以上にこの恵まれた地域の特性を活かし、吹田の実情に特化したまちづくりの実現に向けて共に一歩を踏み出さなければなりません。
【未来を予測し先導する】
1995年に発生した阪神淡路大震災の際、先輩たち は最善を考え発生から3日後には西宮市で災害ボランティアの活動を始めた と聞いています。私たち が暮らす日本は「地震大国」であり、大小を問わず、毎年多くの地震が発生しています。マグニチュード8以上の規模の南海トラフ地震 は今後30年以内に70~80%の確率で発生すると言われています。この地震が発生すれば、私たちが暮らす吹田のまちでも甚大な被害が発生すると予測されています。
2020年1月に初めて国内感染者が発見された新型コロナウイルス感染症は、2023年5月に5類感染症へ移行 されましたが、未だに多くの影響を残しています。突然発生したかのようにみえる新型コロナウイルス感染症ですが、2015年にMicrosoftの創業者であるビル・ゲイツ氏 は「もし1,000万人以上の人々が次の数十年で亡くなるような災害があるとすれば、それは戦争ではなく、ウイルスです。」と明言していました。また、その以前からも多くの有識者がウイルスへの対策を講じるべきと提言が行われていましたが、準備が不十分で全世界に甚大な被害を及ぼしました。
AI・IT技術 が急速に進み、様々な事象 を高確率で予測ができる時代に突入しています。あらかじめ様々な事象を学び、事前に察知し、発生した際にはその対策をいち早く行動に移す。我々が積極的に今後発生しうる事象に備え、学び・体験することで発生時にその経験を活かし、地域のためにリーダーシップを発揮できるよう準備を進める必要があります。
【未来に向けて学びを深める】
未来を考えるにあたって重要なことは、人材育成にしても、まちの未来を考えるにしても、まずは当会の会員自身がまちの一員であり、当事者であるという自覚を持つことです。自らの価値観でもって社会課題を見出して解決していく基点となるのはまずは自分だという気概を持ち、当たり前を問い直すことができるだけの知識や経験を得ると共に、問題が何故発生をしたのかという根源的な原因を追究するための論理的思考や、問い続ける姿勢がとても重要です。
社会課題には環境や教育、貧困、差別などの問題だけではなく、SNS 等を通じた比較的新しい犯罪行為や危険性が生まれる可能性があり、今までの文脈だけでは語ることができない問題もあり、常に新しい事象に対して興味、関心を持ち、学びを深めていかなければなりません。
【共感の輪を広げる歩み】
我々はこれまで市民に向け、多くの事業に挑戦してきました。参加者から共感を得る機会も 多く、我々の存在意義を実感できることがあります。しかし、まち行く人に「青年会議所を知っていますか」と質問すればどれだけの方が認知しているでしょうか。入会対象者に同じ質問をしても残念ながら認知度は想像を大きく下回りました 。
我々の活動目的は「明るい豊かな社会を築き上げる」ことにあり、これは決して我々だけで実現できることではありません。一人でも多くの共感を得た仲間を増やし共に歩みを進める必要があります。そのためには我々の活動をより多くの市民に伝える機会を設ける必要があります。単年度制の枠にとらわれず継続的に認知度を高め、共感の輪を広げる活動の実施を検討する必要が高まっています。
当会は昨年SNSに力をいれInstagramにて多くの情報を発信しました。発信を続けると、出会う人から「あれもJCさんが関わってたんですね」「JCさんっておもしろいことやっていますね」と声を掛けて頂けるようになりました。認知度が低いだけ で、我々の活動を知ってもらうことができれば共感を得ることができます。我々の活動は胸を張れる!そう誇れる団体であるから、自信をもって活動を発信し続ける。そうすると「吹田JCがおもろいことやってるで!」と噂が広がり、自然と共感が生まれ、ファンとなり、仲間が増えていくと私は信じています。
我々は様々なバックグラウンド を持つ人間の集合体です。専門知識を持った仲間が増えることで生まれる相乗効果は計り知れないものがあります。特徴を生かし吹田青年会議所にしかできない、吹田の強みに特化した、吹田のまちのための、市民が参加できるそんな活動をこれからも胸を張って続けることで共感の輪を広げていきます。
【自己成長への一歩】
このように 共感の輪を広げていくためには、まずは我々が挑戦し、成長し続けていかなければなりません。
青年会議所活動の大きな魅力は、独立した組織 で あり、20歳から40歳までの年齢制限があり、単年度制を採用していることだと私は考えます。独立した組織であるため、自らの判断で迅速に行動を起こすことが可能となります。年齢制限があることで常に組織に新陳代謝が生まれ、若く柔軟な発想が生まれます。単年度制を採用することで会員一人ひとりがより多くの機会を得ることができる仕組みになっています。
また、青年会議所活動には4つの成長の機会 があると言われています。毎年役職が変わることで生じる「個人の機会」、地域の皆さまとの連携や、近隣青年会議所との交流で生じる「地域の機会」、世界会議やASPAC、姉妹JCである香港浩洋青年商會(オーシャンJC)との交流などにより生じる「国際性の機会」、JCを通じて知り合った仲間との「ビジネスの機会」。この4つの成長の機会は全会員に平等に与えられます。しかし、その機会を活用するかしないかは本人の判断に委ねられます。
「今は忙しい」「どんな内容かわからないからやめておこう」という判断も間違ってはいません。しかし、何事もやってみなければわかりません。人それぞれの価値観があり、受け取り方も異なります。考える時間も必要ですが、とにもかくにもまずは参加 しなければわかりません。
青年会議所を卒業していく多くの先輩方は「もう少し早く入会していればよかった」「あと1年あれば…」と口にして卒業していきます。限りある時間の中で、1分1秒を大切にし、後悔しないよう、勇気をもって一歩を踏み出してください。もし、一人で踏み出すのが不安な時は私たち が共に歩みます。 参加する前から留まるのではなく、一度参加してから判断しても遅くありません。ユニクロの創業者柳井正氏 は「考えるより前にまずは何かやってみることの方が大事 」と言っています。その一歩を踏み出す挑戦が自身の糧となり、必ず成長する機会になります。少なくとも私はそのおかげで成長する機会を得ることができたと思っています。
【むすびに】
私の父親は当会の第25代理事長であり、産まれた時から多くの 先輩 方に可愛がって頂き育ちました。当時は父親の仲の良いただのおじちゃん と思っていました。 入会し、様々な活動に参加する中で、再会したそのおじちゃん達は当会の先輩でした。そんなおじちゃん達は、卒業した今も当然のように「修練・奉仕・友情」の三信条 の元、吹田のまちのために活動する姿を見せてくれます。私はそんなおじちゃん達の姿を見て、素直にかっこいいと思い、私もそんな人間に成長したいと思っています。
我々は自らが会費を払い、自らの時間を使って活動しています。40歳までの年齢制限は、青年と呼ばれる失敗が許される年齢であり、単年度制の採用は、この1年間しか経験することができません。限られた時間の中で、初めてのことに全力で挑戦しなければいけない環境を作り出すための仕組みになっていると私は考えています。私が尊敬する先輩たちもこの環境の中で多くの挑戦と失敗を繰り返し、様々な経験を積んだからこそ、今のかっこいい姿を見せてくれていると考えています。
「失敗して、迷惑をかけたくない」とある会員が言っていました。仕事・家庭がある上で、一生懸命誰かのために行動した上での失敗は称賛されるべきです。決して手を抜いてはいけません。色々な人の意見を素直に聞き、仲間と支え合い、より良くなるために改良を怠ってはいけません。失敗を恐れ挑戦しなければ成長はありません。「修練」とは一歩踏み出した挑戦を行うこと。「奉仕」とは全力でまち・ひとのことを考え他人の為に行動すること。「友情」とは仲間が辛い時、苦しい時に支え合うこと。 この三信条こそが青年会議所活動です。我々の活動に共感を頂いている皆さまは、そんな我々を認めこれまで共に歩んで頂いたと考えております。
今までもこれからも、吹田青年会議所は全力で吹田のまちづくりに対して真摯に向き合い挑戦し続けることを宣言します。その中で多くの失敗を重ね、ご迷惑を皆さまにおかけすることが必ずあります。 是非とも厳しくも愛のある叱咤激励を頂き、これからもより良い吹田のまちを実現するため、共に歩みを進めて頂きますようお願い申し上げます。
基本方針
◆これまでの感謝を伝える記念式典
◆吹田の特徴を活かした団体間交流
◆未来を予測し体感する事業
◆吹田青年会議所の魅力を広げる活動
◆仲間の輪を広げる会員拡大
◆1歩を踏み出すきっかけとなる定例会
◆厳しくも愛のある理事会
◆会員の挑戦を支える財政規則審議会